第七話 ホームレスは目障りか?

俺は神さんから携帯電話を受け取った。そして頭を下げて帰ろうとすると、神さんがポツリと言った。
"俺たちが目障りか?"と。
俺はドキリとした。返す言葉がなかった。
神さん達のテントを襲った時は別にこれといった理由などなかったのだ。それに酒に酔った勢いがあった。
俺が黙っていると、神さんは"もうするなよ"と言って自分のテントへ入っていった。
俺はもう一度テントへ向かって頭を下げて、その場から逃げるように駅へ駆け出していた。走りながら、自分自身が情けなくなっていた。酒に酔ったからと言っても、自分一人だけだったらテントを襲ったりしなかっただろう。仲間がいたからやったのだ。そう。しょせん一人だけでは出来ないのだ。俺は自分がすごくカッコ悪く感じた。そして恥ずかしくなっていた。
俺が電車で帰っている頃に、神さんたちの住む公園では、そこに住むホームレスのおっちゃん達が集まってなにやら話し合っていた。実はこのテントの近くにある場所で国際的な催しがあるために、この場所から立ち退きを求められているのである。ホームレスのおっちゃんの中には、ついにきたかと思っている人が多かった。中には早々とテントを弁たたんで出て行った人もいた。神さんたちは今後どうするかを話し合っていたのである。
都とすれば今がチャンスとばかりに色々と言ってくる。生活保護をすぐに取れるとか、シェルターに入れるとか、自立支援センターにすぐにでも入れるとか。
都としても、公園にあるテントを一掃してキレイにして"どうですホームレスが減ったでしょう"ということにしたいわけである。
しかしそのテントを追い出された人たちは、路上に流れただけであって、ホームレスの数は減っていないのである。
今までにも、東京大阪愛知といった大都市では、何か催しがあるたびに何回も起こったことである。
神さんたちの話し合いはなかなかまとまらなかった。
徹底的に戦うべきだという人、いまがチャンスだからホームレスから脱出しようとする人が真っ二つに分かれたのである。
続く
★ホームレスのおっちゃんの一言
もう半月で今年も終わりですね。今年中は本当にお買い上げありがとうございました。おかげさまで仮の住む場所も決まりました。次はビックイシュー卒業へ向けて頑張りたいと思いますので来年もよろしくお願いします。
2010年冬
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